融資を受けるとき、多くの経営者が「借入金額」や「金利」に意識を向けます。
もちろん、これらは重要な要素ですが、本当に大切なのは 「自社の返済能力に対して利息負担がどの程度の余裕を持っているか」 という点です。
利息や元本返済に追われてしまえば、せっかくの資金調達が経営を苦しめる結果になりかねません。
「返せるかどうか」だけでなく「余裕を持って返せるかどうか」を考えることが、健全な資金繰りの第一歩です。
今回は、利息負担の“上限ライン”を考えるうえで経営者が押さえておきたい指標をご紹介します。
売上高支払利息率でシンプルに確認する
もっとも分かりやすい指標のひとつが「売上高支払利息率」です。
計算式: 売上高支払利息率=支払利息÷売上高×100
この数字を見ると、自社の売上に対してどの程度の利息を支払っているかがひと目でわかります。
- 一般的に 1%を超えると要注意 と言われています。
- 健全な企業では 0.5%未満 に収まるケースが多いです。
この指標の良いところは、とてもシンプルで直感的に理解できる点です。
ただし、業種によって利益率は大きく異なります。
利益率が低い業種(卸売業など)では、わずか0.5%の負担でも資金繰りに大きく影響することがあるため注意が必要です。
銀行が重視するDSCRとインタレストカバレッジレシオ
銀行は融資審査の際、「利息や返済をどれだけ余裕を持って支払えるか」を細かくチェックします。
その際に用いられる代表的な指標が次の2つです。
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
- DSCR(Debt Service Coverage Ratio)
インタレスト・カバレッジ・レシオ
【(営業利益+受取利息+受取配当金) ÷ (支払利息+割引料)】で計算します。
目安は「3倍以上」。
「2倍未満」になると注意が必要です。
例えば、営業利益600万円に対して支払利息が200万円なら、インタレストカバレッジレシオは3倍。ぎりぎり合格ラインです。
利息の3倍以上の利益を確保できていれば、金融機関から「余裕がある」と判断されやすくなります。
DSCR(Debt Service Coverage Ratio)
計算式は【(営業利益+減価償却費) ÷ 年間元利返済額】です。
返済すべき元本と利息を営業での儲けでまかなえるかを示します。
この指標は「1.5倍以上」で安全とされています。
逆に「1.2倍未満」になると危険と判断される可能性が出てくるので注意が必要です。
例えば、営業利益500万円+減価償却費200万円=700万円のキャッシュフローに対して、年間元利返済額が600万円であれば、DSCRは1.16倍となります。
このように、銀行は「売上」や「利益額」そのものよりも、「返済にどのくらい余裕があるか」を重視しています。
自社の数字を事前にチェックしておけば、融資交渉の際に安心感を持って臨めるでしょう。
上限ラインを意識した資金繰り管理
利息や返済の負担を考える際には、「上限ラインを設定」することが重要です。
資金繰り表に返済スケジュールを反映させ、売上高支払利息率・インタレストカバレッジレシオ・DSCRを試算してみましょう。
もし基準値を下回るようなら、借入額や返済期間を見直す必要があります。
上限ラインを意識しておくことで、
- 借入状況の把握ができる
- 銀行との交渉で「自社は余裕がある」と示せる
- 将来の投資や運転資金に余力を残せる
といった効果が得られます。
結果として、安心感のある資金繰りが実現し、事業の挑戦にも余裕を持って取り組めるのです。