補助金は、事業の成長を後押ししてくれる強力な制度です。
新しい設備の導入、販路開拓、業務効率化など、「これが実現できたらもっと伸びる」という取り組みを後押ししてくれる存在でもあります。
ただし、実際に申請や採択に関わっていると、誤解されやすいポイントがいくつもあります。
今回は、私が現場でよく感じる「補助金を受ける際に注意しておきたい3つのこと」をお伝えします。
必ず採択されるわけではない
まず大前提として、補助金は申請すれば必ず採択されるわけではありません。
審査は「限られた予算の中で、より効果が見込める事業」を選ぶ仕組みになっています。
つまり、どんなに書類が整っていても、申請者間で優劣を競い合い、上位者から採択がされるものなのです。
また、補助金の目的は「国の政策に合った取り組みを促すこと」。
そのため、「事業の魅力」だけでなく、政策の方向性と合っているかも重要な判断ポイントです。
このため、補助金は「もらうための目的」ではなく、
自社の成長計画を進めるための「手段」として位置づけるのが正解です。
「補助金が出ればラッキー」、「採択されなくても進める」という姿勢で計画を立てておけば、仮に不採択でも事業は前に進みます。
これが、結果的に安定した経営につながる考え方です。
補助金は立替が発生する
次に意外と知られていないのが、補助金は原則として後払いであるという点です。
たとえば、100万円の補助金が採択されたとしても、すぐに振り込まれるわけではありません。
実際には、
- 自社でいったん費用を全額支払い
- 事業完了後に報告書を提出
- 内容が確認された後、数か月後に補助金が振り込まれる
という流れになります。
つまり、補助金分を一度立て替える必要があるということです。
だからこそ、申請の前に資金繰り表を作成し、キャッシュの流れを確認しておくことが大切です。
もし一時的に資金が不足する場合は、銀行融資との併用も有効です。
最近では、補助金の交付決定通知を提示することで「つなぎ融資」に応じてくれる金融機関も増えています。
「採択されたらどう使うか」だけでなく、
「採択されてから実際に支払うまで、どう資金を回すか」を考えておくことが、スムーズな実行のカギになります。
事前着手の禁止
補助金申請で最もトラブルが多いのが、事前着手(交付決定前に契約や支払いをすること)です。
補助金のルールでは、「交付決定通知」が届く前に発注・契約・支払いを行った場合、その経費は補助対象外となります。
つまり、採択されても「その支出は対象外」と判断されてしまうことがあるのです。
たとえば、
- 見積書をもらって、口頭で「お願いします」と言ってしまった
- 契約書の日付が交付決定前になっていた
- 発注書や請求書を先に発行してしまった
といったケースです。
一見、些細なことのように思えますが、補助金の審査では「いつ発注したか」が厳密にチェックされます。
「せっかく採択されたのに対象外」とならないよう、スケジュール管理には細心の注意が必要です。
対策としては、
- 交付決定通知を受け取ってから契約・発注を行う
- 発注日や支払い日を証拠として残す
- 書類の保管を徹底する
といった基本を守ること。
焦って進めるより、ひと呼吸置いてから動く方が確実です。
まとめ
補助金は、上手に活用すれば事業を加速させる強力な支援策です。
ですが、採択・立替・着手の3つのリスクを理解していないと、逆に経営を圧迫することもあります。
大切なのは、補助金に合わせて事業をつくるのではなく、事業に合わせて補助金を選ぶという姿勢。
しっかりとした事業計画を立て、その上で補助金を「後押しの一手」として活用すれば、
補助金がなくても前に進める強い会社になります。