多くの経営者が、「借入はできるだけ避けたい」「借金はリスクだ」と考えています。
確かに、返済義務がある以上、借入は軽いものではありません。
ですが、本当に強い会社ほど、借入を「戦略」として活用しています。
借入を「悪」と捉えるか、「仕組み」として活かすかで、経営の安定性は大きく変わります。
資金に余裕があれば、タイミングを逃さずに投資ができ、次の成長の波をつかむこともできます。
一方、資金が尽きれば、どんなに良い事業計画でも実行に移せません。
つまり、借入とはリスクではなく、「資金繰りを通じて会社を強くするための戦略」なのです。
今回は、借入を前向きに活かしている会社が共通して持つ、3つの視点について解説します。
借入金がある会社は「キャッシュフローの視点」を持っている
借入をしている会社は、毎月の返済や利息の支払いを通じて、資金の流れを意識する「きっかけ」を得ることができます。
そのため、利益だけでなく「おカネの動き=キャッシュフロー」で経営を見る習慣が養われるのです。
経営の数字には、「利益」と「おカネ」の2つの流れがあります。
黒字でもおカネが足りなくなるのは、売上の入金が遅れたり、在庫や売掛金に資金が滞っているからです。
つまり、利益があっても資金がなければ、会社は動けません。
借入金がある会社は、この「おカネの時間差」を常に意識して行動しています。
返済日を把握し、入金スケジュールと照らし合わせ、将来の資金不足を防ぐ。
資金繰り表を毎月更新している会社ほど、経営判断が早く、ブレないのです。
資金繰り表を更新することで、将来の会社のおカネを予測し、早めに行動することができるようになります。
これは、損益計算書からだけでは把握することができません。
資金繰りの習慣は、融資のためだけでなく、経営の安定とスピードを生む最大の武器です。
借入金は、その意識を磨く「きっかけ」にもなります。
借入金がある会社は「銀行との関係づくり」ができている
借入金があるということは、銀行と継続的な取引関係があるということです。
これは単なるおカネのやり取りではなく、信頼関係の積み重ねでもあります。
銀行は、日頃から経営情報を共有してくれる会社を信頼します。
定期的に決算書を提出し、今後の見通しを説明する会社には、「この経営者は数字に強い」「計画性がある」と感じます。
それが結果として、次の融資や優遇条件につながるのです。
一方、借入がなく銀行との接点がない会社は、いざという時に「初対面」から始まります。
緊急時に資金を確保するには、過去の実績と信頼が不可欠です。
つまり、借入がある会社ほど「資金調達力」が強いのです。
銀行は「おカネのパートナー」です。
良好な関係を築いておくことで、将来の資金繰りを安定させる効果があります。
借入金がある会社は、この関係を活かしながら、リスクを小さく・チャンスを大きくできるのです。
借入金がある会社は「未来への投資」ができている
本当に強い会社は、借入を「守り」ではなく「攻め」に活用しています。
自己資金だけで経営していると、どうしても守りの姿勢になりがちです。
しかし、借入を上手に活用すれば、次の一手を打つための資金を確保できるのです。
例えば、
- 新しい設備や人材を先に確保できる
- 仕入れや外注費を前倒しで支払い、スムーズに仕事を回せる
- 広告や販路開拓など、成長のための投資に踏み切れる
こうした「先手の経営」は、資金に余裕がなければできません。
借入は、そうしたチャンスをつかむための「潤滑油」です。
さらに、投資と回収のバランスを意識できる経営者は、数字に強くなるというメリットもあります。
「この投資でどれだけの利益が生まれるか」「何年で返済できるか」を常に考えるようになり、
結果として、経営全体が「根拠のある判断」に変わります。
借入金を上手に使うことは、未来の売上を先にカタチにする行為でもあります。
これは、自己資金だけで回している会社にはできない発想です。