債務超過による銀行融資への影響~東京商工リサーチの動向調査の発表を受けて~

債務超過は銀行融資に大きな影響を与えます。
この状態に陥ると、新規の融資を受けられる可能性が大きく下がるのです。

また、銀行は会社から預かった決算書をそのままの状態で判断するわけではありません。
預かった決算書を精査し、実態貸借対照表で確認をします。

そのため、ギリギリ債務超過に陥っていないと思われるような会社でも、
実際は債務超過になっているという可能性もあるのです。

今回は「債務超過による銀行融資への影響~東京商工リサーチの動向調査の発表を受けて~」というお話です。

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目次

債務超過とは?銀行融資の関係性

債務超過とは、負債が資産を上回っており、純資産がマイナスになっている状態です。
純資産は自己資本といって、外部から借入をすることなく、自社で準備をした資金のことを指します。

この金額がマイナスになっているということは、所有している資産を自己資本でまかなうことが出来ず、他人資本で取得しているということになります。
つまり、自社の資金で経営を維持できていないことを指します。

また、「繰越利益剰余金」という科目が純資産の部にあります。
「繰越利益剰余金」は過去の利益が蓄積される場所です。

純資産の部がマイナスということは「繰越利益剰余金」もマイナスです。
「繰越利益剰余金」がマイナスということは、今までの経営の通算利益がマイナスであることを指すのです。

債務超過と銀行融資の関係性

債務超過=倒産にはなりませんが、倒産に近づくことは間違いありません。
企業に収益力がないということもありますが、銀行融資を受けにくくなることも1つの要因でしょう。

東京商工リサーチが2014年度から10年間の間に会社が陥った債務超過の回数を調査した【2023年度「債務超過の中小企業」の動向調査】によると、
2014年度から10年間の間に「債務超過なし」と答えた企業の平均有利子負債額が6億1200万円に対して、「債務超過が1回~3回」「債務超過が4回~6回」と答えた企業の平均有利子負債額は2億円前後、「債務超過が7~9回」「債務超過が10回」と答えた企業は1億2000万円前後にとどまっています。

平均有利子負債額が4億円以上も差があることに驚きですね。
(有利子負債とは、会社が利息をつけて返済する必要がある負債のことをいいます。)

調査結果からも分かるように、債務超過に陥ることが銀行融資に多大な影響を与えていることが分かります。
融資が受けにくくなれば、資金繰りも必然的に厳しくなることが目に見えています。

また、10年間で債務超過に陥った企業の件数は全体23.0%、4社に1社が1回以上は債務超過になっています。
このように債務超過に陥る可能性は低くないのです。
そのため、融資を受けるタイミングも非常に重要になってきます。

経営が上手くいっているときこそ、しっかりと融資を受けて、手元の資金をあつくしておきましょう。
本当に会社の経営が厳しいときに融資を受けようと思っても、今までの関係性が無ければ難しくなります。

銀行は、預金者の預金を融資金として活用しています。
預金者保護の観点からも、返済が可能な企業でなければ融資をすることを躊躇するのは当たり前のことなのです。
そのため、経営状態が良いときから銀行との関係性の構築を進めておく大切です。

銀行は実態を把握しようとする

上述したように債務超過が銀行融資に大きな影響を与えることはご理解いただけたかと思います。
こうなると、「どうにかして債務超過にならないように」と考えてしまうのが人間の心理。

そのため、粉飾決算に走る企業も少なくありません。
それゆえに銀行も非常に厳しく会社の数字をチェックしています。

貸借対照表の勘定科目ごとの数字が本当に正しい数字なのか精査するのです。
勘定科目内訳書から「不良債権や不良在庫がないか?」「債務の未計上がないか?」を確認します。

何年も前から残っている売掛金などがあれば、その分の金額をマイナスします。
資産が減れば、当然純資産の金額が減ります。

このように、会社の実態を表す実態貸借対照表を作成し数字を修正するのです。
そのため、ギリギリ債務超過になっていないような会社は、
修正をしたら債務超過の状態に陥っているということも考えられます。

そして、債務超過になれば上述したように銀行融資を受けにくくなるのです。

まとめ

今回は「債務超過による銀行融資への影響~東京商工リサーチの動向調査の発表を受けて~」というお話でした。
債務超過に陥ると銀行融資が非常に受けにくくなります。

東京商工リサーチの調査からも分かるように、
債務超過に陥ったことのある会社は2014年度からの10年間で20%以上もあります。
これは決して少ない数字ではありません。
そのため、今は経営状態が良くても、将来的に債務超過に陥る可能性は十分にあるということです。

経営状態が良好なときから銀行との関係性を構築し、融資を受けるようにしておきましょう。
手元の資金があつくしておけば、有事のときも対応をすることができます。

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